歯を削るということは歯を失うということ
むし歯の治療は「削って治す」が基本だと多くの方は思っていらっしゃるかもしれません。でも実は、削る必要があるむし歯はとても進行している状態のむし歯なのです。
むし歯が急には進行しません。1-2日で進行するものではなく、年単位の長い年月を経過してむし歯が進行してしまった場合に削る必要が出てくるのです。
いったん削ってしまった歯はもとには戻りません。歯科医院では削って、削ったところに詰め物をして一見綺麗に修理することは可能ですが、歯を削ることで天然歯も一部失いますし、歯髄(歯の神経)への影響も少なからずあると考えられます。
そして治療することで、さらに磨きにくい環境が二次的につくられてしまうと、むし歯の治療をした後はさらに新しいむし歯が発生するリスクが高まってしまうのです。
削るべきむし歯と削る必要のないむし歯を見分ける
むし歯の進行度もそれぞれです。小さなむし歯もあれば歯髄(神経)まで到達しそうなくらい奥深く進行してしまったむし歯もあります。
どのようなむし歯であっても、治療の前にまず、歯の状態を診査診断する必要があります。診査診断なしには、むし歯の進行度はわかりません。患者様のお話から得られる情報だけではどのような状態のむし歯かは正しく診断することはできません。
歯科医院において、お口の中の状態を診査したり、むし歯の状態がよくわかるようにレントゲン写真を撮影したり、治療する前にはさまざまな準備が必要です。
患者様からの情報やこれらの診査結果を総合して、はじめてむし歯の状態を診断することができるのです。
この診断結果によって、削るべきむし歯と診断時点では削る必要のないむし歯を見分けていくのです。
むし歯が大きくならないように管理する
むし歯が大きくなり進行するには、年月が必要です。たとえむし歯ができたとしても、進行に必要な年月の間に、なるべく進行しないような「予防策」をとることができればむし歯を予防することが可能です。
逆にを言えば、なにも予防策を打たなかったときに残念ながらむし歯は進行してしまうのです。
上記に述べたように削るべきむし歯と削る必要のないむし歯を診査診断をすることできちんと見分け、適切な治療を受けることで、歯を削ることを最小限に抑えることができると思います。
削るべきむし歯に対しては、適切な削る歯科治療が必要です。削る必要のないむし歯に対しても、むし歯ではある状態ですので、治療が必要です。
削る必要のないむし歯は大きくならないように、歯の周りのプラークを徹底的に取り除き、ご自身でのセルフケアを向上させて、むし歯を管理していくいわゆる「予防治療」をする必要があるのです。
そして、長期的にむし歯の状態を観察し、削るべきむし歯に進行していないかを確認し、フォローしていく必要があります。残念ながら、むし歯を進行させる細菌たちに私たち人間が勝利できなければむし歯は進行してしまいます。なるべくそのようなことが起きないように、定期的に歯科医院を受診し、経過観察をする必要があるのです。