マイクロスコープを用いた精密根管治療とは
◆マイクロスコープとは
マイクロスコープは手術用顕微鏡のことで、治療部位を最大約20倍程度まで拡大してみることができる医療機器です。これまで肉眼的にはみることができなかった部分もしっかりと可視化して「見える」化することで、手探りだった治療からより精度の高い治療が実現可能になりました。
治療中はどんな治療がなされているか患者様は見えませんが、マイクロスコープを用いれば、術中の写真や動画を記録することができ、治療後にお見せすることも可能です。
歯を削る時には、必要なところだけを削ることが可能なので、なるべく健康な歯を残しながら、必要最小限の部位だけ歯を削るよう治療を進めていきます。
歯と歯肉の隙間もマイクロスコープを用いるとよく見えるので、出血点やプラーク、歯石付着なども確認することができます。
◆マイクロスコープを使用するメリット
根管治療は歯の内部へアプローチしていく治療方法なので、とても繊細な作業が必要となります。歯の中にある根管の太さは1mm以下ですので、肉眼ではとてもみつけることが難しいです。
誤って歯を削りすぎてしまったりすると、穿孔といって歯に穴をあけてしまう危険性があります。お口の中は暗くて、ミラーと肉眼だけでは十分に術野を確認することが困難です。
マイクロスコープはLEDライトを用いて術野を明るく照らしてくれるので根管治療に最適な環境と整備することが可能です。
◆ ラバーダムを用いた根管治療
ラバーダムとは治療部位に装着するゴムのシートのことで、治療部位に唾液が入らないように無菌化した治療環境を作るために必要なものです。治療する歯だけを露出し、細菌が多数存在する口腔内と術野を隔離するために使用します。
口腔内にはたくさんの細菌がいますので、根管治療を行う部位を清潔に保ち、可能な限り無菌化した環境を作り出した上で治療に望まないと治療は成功に近づけません。
ラバーダムを使用せず根管治療をすると、何度も根管内を洗浄しきれいにしたとしてもすぐに唾液が入ってきてしまいます。
根管治療の再治療は避けたいものです。治療費用も時間もかかり患者様の負担も大きくなります。再治療にならないためにもラバーダムを用いた精密根管治療を受けることで、再発するリスクを減らす治療を選択することも治療オプションのひとつであると考えます。
◆細菌と徹底的に戦う北欧式根管治療
根管治療で重要視すべきなのは、歯髄(神経)に問題を引き起こす原因となった「細菌」とどのように戦っていくかということです。
歯の内部構造である歯髄まで細菌が侵入し、細菌が増殖したことにより歯髄が炎症を起こしてしまい、根管治療が必要になってしまうのです。
つまり、歯髄が入っている歯髄腔(神経の部屋)には多量の細菌が繁殖している状態なのです。
通常の根管治療は歯髄を除去したあと、根管の形態を整えて、薬液で洗浄ののち、水酸化カルシウム製剤などをもちいて根管貼薬を行います。
その後痛みや違和感などの症状がとれてしまったら、歯科医師の判断により根管充填に進むことが基本的な根管治療の工程です。
しかしながら、根管内の細菌は肉眼ではもちろんですが、マイクロスコープを用いても見ることはできません。残念ながら、見た目が綺麗そうであっても実際にはまだ細菌が根管内にたくさん残っている場合もあるのです。
このように生き延びてしまった細菌たちは、根管治療後も繁殖する能力がまだ残っていれば、将来的にまた根管治療が必要になるような問題を引き起こすのです。
当院では、可能な限り将来的な再発を減らしていくために、根管充填前に根管内の細菌は限りなく少なくなっているのかを細菌検査を行います。根管内からサンプルを採取し、培養をすることで、目に見えなかった細菌を可視化することができるのです。
根管内が無菌化できていることを確認した上で根管充填に進んでいきます。
このように生物学的な観点から、細菌と戦い、再発のリスクを可能な限り軽減しようとする根管治療がスウェーデンをはじめとする北欧式の根管治療です。根管治療の方針や考え方にはアメリカ式などさまざまな考え方がありますが、当院では北欧式の根管治療のコンセプトをベースに歯の状態にあわせた治療を提案させていただきます。
当院の精密根管治療の流れ
治療期間・回数
費用(※症状・状態によって金額は異なります。)
付随処置費用一覧(上記根管治療の際に必要に応じて費用が発生します。)
被せ物や土台の除去が必要のない場合は治療費用は除去の費用はかかりません。
リスク・副作用
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治療前診断では見つからなかった歯の破折が治療中に発見されるような場合には歯を可能な限り保存する方法を検討しますが、将来的に抜歯になる場合があります。
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精密根管治療中にもニッケルチタンファイルが根管内で破折する場合があります。
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炎症が強い場合には初回の治療だけでは痛みが消失しない場合があります。その場合には鎮痛薬の併用や、次回の治療をはやめに再開する必要があります。